会長の言葉

「松露」の里づくり 会 長 菅原 三朗

 「松露」は主に海岸のクロマツ林に春と秋に発生する食用きのこである。「松露」は一種特有の香気と歯ごたえがあり、美味のきのことされ多くは生のまま吸物や和え物、茶碗蒸しの具材として珍重されている。また菓子類も多く各地にあり、佐賀県の「松露まんじゅう」神奈川県の「松露羊羹」と銘々され販売されている。しかし近年はクロマツ林の手入れ不足や松枯れによって減少し、高価に取引される「幻のきのこ」と言われるほど珍しいきのことなっている。
 現在「松露」の栽培化に向けて、各地で試みられているが本格的な量産には至っていないため、一般的には「松露」の希少価値が認知されていない。従って生産・流通・販売の効率化が進んでいないので「未開の市場」のまま商品価値が高いものになっている。
 潟上市商工会青年部では、地域活性化提案型事業として平成19年度「松露開発プロジェクト」を立ち上げ、3ヶ年にわたり継続して活動を展開している。
 潟上市天王出戸浜海岸の松林では、かつて「松露」が採取されていたが、自然環境の変化、生活様式の変化等により、松林内の雑草木、枯損木、落ち葉などの堆積物が多くなり、マツと菌根性きのことの共生関係も崩れ、「松露」をはじめきのこの発生は見られなくなっている。
 健全な海岸の松林を維持していくには、「松葉かき」など松林の手入れを常に行う必要があるが、前述のような悪循環により松食い虫などの病虫害や気象害などの被害が多発し、駆除剤の散布などが行われていることから健全な松林を取り戻すことは、時間がかかるものと思われる。健全な松林では多様な菌根性きのこを楽しむことが出来る。おいしいきのこを味わうという身近な目的として、もう一度松林に関わってみることが必要ではないだろうか。

 「松露」は松枯れ病の抑制に有効との研究成果はもとより、シャリシャリとした歯ごたえとほのかな松葉の香りを楽しめる、幻の食材として魅力ある食品であることから、潟上市の特産品としての確立を目指していきたいと考えている。
 平成19年度に、専門委員会を立ち上げ、「松露」の採取、宮城県林業試験場、秋田県農林水産技術センターの協力により、「松露菌」の確保、「培養菌」を確保し民間企業の協力により、松の苗木を植え「松露胞子液」を散布して、試験植栽を実施している。
 平成20・21年度においては、松林の整備、クロマツの苗木1 0 0本を松林に、プランターに20本の植栽をし成育管理を行っている。さらに市民ボランティアによるクリーンアップ事業として、松林の落ち葉拾い、防風網の設置など環境保全への事業展開を行ってきた。
 「松露」の自生までは植栽してから4〜5年を要することから、協力者からの「松露」の提供により成分分析、商品開発にも取り組み、2種類の商品の完成をみている。
 しかしながら現状では自然発生が困難と考えられることから、人口栽培技術の確立により、「松露商品」に関する調査分析を実施し、「松露」の特産化、地域ブランド化へ結びつけることを目的とするとともに、近い将来天王海岸の松林が「松露」の採取出来る健全な松林となることを目指した活動を展開していくこととしている。